愛のムチ

星乃小夜利(廣木隆一『海辺の町で』出演)

「みんな、セリフなしで表現することがどれだけ大変なことか苦しむといい。」

これは、今回廣木隆一監督から私たちに与えられた愛のムチのお言葉です。
そうなんです。『海辺の町で』は台本にセリフがなく、設定のみで作られた作品です。
さらに廣木監督は、こう仰っていました。
「本当は、この設定すらも事前に渡さずに、当日現場に行ってから渡したかった。」と。
でも、こんなに厳しいことを仰っていても、実際の監督はシャイでとっても愛(「愛情」よりもさらに高貴な「愛」です)が深いお方なのです!!
打ち上げの時に廣木監督が「みんなを福島に連れて行きたかったんだよ
ね・・・。」と仰った時、思わず目頭が熱くなりました。
今、この文章を書いていて思い出すだけでも、目頭が熱くなってしまうほどです。
(ああ、私たちは廣木監督に愛されているんだなぁ・・・)と幸せな解釈をし、
(私は、廣木監督のことが大好きなんだなぁ・・・)と改めて実感した次第でした。
試写会で作品を観させて頂いて、ここまで書いたことが見事に絵に表れていると感じました。
あの時福島で感じた空気、匂い、寒さ、暖かさ、悲しさ、優しさ、感謝の気持ち・・・色んな気持ちがスクリーンから溢れています。
「セリフなし」ですが、みんなそれぞれの人物の言葉をアドリブで発しているので無声映画ではありませんでした。
生きた言葉が飛び交っています。
撮影時は、みんなで当時避難所として使われていた公民館に泊まって自分たちでごはんを作ったり、夜はスーパー銭湯に行ったりと、貴重な経験をさせて頂きました。
その全ての経験がスクリーンに表れています。
「あなたがいてくれるおかげで私がいる」そんな思いを沢山味わうことのできた、宝物のような日々でした。
こんな貴重な経験をさせて頂き、廣木監督をはじめ、スタッフの方々、共演者の方々、すべての人に感謝です。

是非、多くのお客様に劇場に足を運んで頂きたいと思います!
お客様に観に来て頂いて、はじめて映画は完成です。
心よりお待ち申し上げます。