第3弾作品の撮影監督を紹介します!

佐々木裕文
いまおかしんじ『集まった人たち』、大根仁『恋の渦』、山本政志『水の声を聞く-プロローグ-』制作スタッフ)

今回第3期シネマインパクト作品に参加して下さったカメラマンのお二人を、現場を共にした身、尊敬する身としてあくまで極私的に紹介させていただきたいと思います。

高木風太さん
(熊切和嘉監督作品『止まない晴れ』、大根仁監督作品『恋の渦』、山本政志監督作品『水の声を聞く-プロローグ-』)

【主な撮影作品】
『壁の中の子供達』(2013 監督:野口雄也)
『ありふれたライブテープにFocus』(2012 監督:山下敦弘)
『治療休暇』(2012 監督:梅澤和寛)
『若きロッテちゃんの悩み』(2011 監督:いまおかしんじ)
『トビラを開くのは誰?』(2011 監督:伊月肇)
『ring my bell』(2011 監督:鎮西尚一)
『堀川中立売』(2010 監督:柴田剛)
君と歩こう』(2009 監督:石井裕也)
『−×−(マイナス・カケル・マイナス)』(2008 監督:伊月肇)
『にくめ、ハレルヤ!』(2006 監督:板倉善之)
etc

太さんの印象は、監督を始め技術部さんや現場のスタッフと楽しそうに話す方だなぁってのが一番でした。もちろん話している監督達の表情も和やかですし。
風太さんがきっかけとなり現場が動きだすといいますか、監督の意向を聞き出し風太さんが提案、そして決まったカメラのフレームやカットによって作品のイメージがよりハッキリし、その瞬間、現場にいる人達が急速に作品のカタチを共有できるようになっていくようでした。
風太さんは、各シーンごとの登場人物だけでなく、それまでの時間経過を含めた空間的な感情を、ダイレクトに見ている側に伝えてくれるカメラマンだと思います。それも、あくまで自然に、感情を押しつけるわけでなく観ている側の感情が生まれてくるような。
撮影の合間のふとしたコミュニケーションややり取りで、役者さんと監督の間を繋げてくれる存在であり、制作スタッフはもちろん役者さんからの支持が厚いのも風太さんの特徴ではないかと。
現場で自然体でいるということ、現場は楽しい、楽しむっていうことを教えてくれたエモいカメラマンさんです。

戸田義久さん
いまおかしんじ監督作品『集まった人たち』)

【主な撮影作品】
『君へ。』(2011 監督:西村晋也)
『吉祥寺の朝日奈くん』(2011 監督:日向朝子)
『かぞくのくに』(2011 監督:ヤン・ヨンヒ)
キャタピラー』(2010 監督:若松孝二)
実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2007 監督:若松孝二)
『Life ライフ』(2007 監督:佐々木紳)
『9.11-8.15 日本心中』(2005 監督:大浦信行)
etc

松監督作品のカメラマンということで、勝手にマッチョな方を想像していたらビックリ、想像とは正反対の印象の顔立ちの方でした。
初対面にもかかわらず、ずぶの素人の私に嫌な顔一つせず、一から照明機材やカメラ備品の名前、組み立て方などを丁寧に教えて下さいました。
戸田さんのカメラは、数々の映画賞を受賞し現在もいまだ話題になっている、ヤン・ヨンヒ監督作品『かぞくのくに』を観ても感じたことなんですが、ある程度の主張もありつつ、あくまで客観性を提供し、暖かい色味や空間など観ている側に全てを委ねる環境を作り込んであるように思えます。これは映画を観るうえでとても優しくもあり同時に現実的でもあるなと感じます。
いまおか監督の現場はワンシーンに2時間以上をかける演出だったのですが、その際戸田さんは何も言わずに照明を作り込み、監督の画を実現する為のカメラのフレームやカット割りを決めて、監督の演出を見守っていました。
いまおか監督の演出(場当たり)が終わり次第、監督にカット割りを提案し、スムーズに撮影にとりかかる。現場にいた誰もが惚れ惚れしたいまおか監督独特の素晴らしい演出法(ゲロの指導時は監督自ら口に指を突っ込んでえづいてみせたり)が、当たり前のように現場で成立できていたのは、戸田さんがこれまた当たり前のように作り込まれた舞台を提供し現場の流れをまわしてくれていたからではないでしょうか。
戸田さんの完膚なきまでの心遣いは作品完成には必要不可欠でした。

のお二人に共通して言えるのは、俳優、制作スタッフからの人気が高かったこと、周りへの気配りが素晴らしいこと、よく食うこと。クランクアップした際に向こうから手を差しだし「お疲れ様」「ありがとうございました」とねぎらって下さるような姿勢はスタッフ一同、心打たれました。なにより現場が楽しかった。

このようにシネマインパクト作品は素晴らしい監督はもちろん、素晴らしいプロの技術部の方々と作りあげているのです。高木風太さんは観ている側の感情をそそってくるカメラマンさん、戸田義久さんは観ている側の為に映画を観るうえで最高の環境を作り上げてくださるカメラマンさんというふうに感じました。

制作コースで初めて映画の現場に参加し、これからも映画に携わっていこうとしている身としては、「このお二人と現場でいつか必ず」って思いが強いモチベーションになってもいます。

高木風太撮影『止まない晴れ』(熊切和嘉監督作品)

戸田義久撮影『集まった人たち』(いまおかしんじ監督作品)