シネマインパクトの1年

高木悠衣
(『止まない晴れ』『恋の渦』制作スタッフ、『海辺の町で』『水の声を聞く-プロローグ-』出演)


高木悠衣です。
おそらくシネマ☆インパクトに長く関わったほうだと思われます。
そんな私がブログを書かせてもらいます。

今回の第三弾では、
廣木隆一監督『海辺の町で』
山本政志監督『水の声を聞く -プロローグ-』に出演

熊切和嘉監督『止まらない晴れ』
いまおかしんじ監督『集まった人たち』
大根仁監督『恋の渦』
では制作、制作応援として参加しました。


私はシネマ☆インパクト第一弾から、参加しています。
2012年はシネマ☆インパクトで始まり、シネマ☆インパクトで終わりました。

初めていった映画館で運命的にチラシを見つけ、「映画に出演したい」という思いだけで必死に毎日通いいました。

第一弾は、みんなが手探りで、それゆえにクラスを超えて、とても団結力があった気がします。
大森監督、瀬々監督作品に出演して、カメラの前で表現する楽しさと辛さを知りました。私の中で本当に大きな転機になりました。ここにいたいと思いました。

他のクラスも、お願いして見学という形で通わせてもらいました。

シネマ☆インパクトの空間は、今まで知らなかったことが、たくさん知れました。
求めればなんでも経験できる空間でした。普段なら会えないような人たちにも会えました。私にとってはとてもとても刺激的な場所でした。

偶然声をかけてもらい、山本政志監督『アルクニ物語』に制作スタッフで参加しました。

それも私の今後の生き方に大きなきっかけを与えてくれました。
映画が作られる過程や映画とはなんぞや?ということ、とりあえず何も知らない中、一生懸命でした。
私よりも年下の制作スタッフに必死についていき、監督には怒られ…
辛かったけど、やりきったあとの達成感と満足感は中毒になりました。
作品を見たときの気持ちは出演した時より遥かに嬉しかったです。


第二弾は、とても人があふれていて、それだけで毎日辛かったです…
加えて、とても苦い経験をたくさんしました。
自分よりはるかに経験があり、魅力的な人がたくさんいました。
わかってはいるけど、悔しいし、苦しい毎日でした。
でも、いろんな人に出会えたことは、とてもとても財産になりました。
新たな視点や思考を与えてもらいました。
新宿でのゲリラ撮影はヒヤヒヤしました。あんな経験はやろうと思ってもできないです。
山下監督の撮影の時に、新宿で踊ったとき、「カット。OK」の声を聞いて、初めて飛んで跳ねて喜びました。
楽しかった。

そして、第三弾。
まずは熊切監督クラス。
今回は望んで、制作として入りました。
もっともっと深く映画制作のことを知りたかったから。

準備期間中のこと。こんな私に、カメラをまわす機会をくれました。
初めは何を撮ればいいのかわからず、力が入りっぱなしでした。
でも撮りたいものを撮るようにすると、演じている人の気持ちの変化に気づけ、またこの人のここが見たい、と身体が勝手に動くようになりました。
なんだか、今まで表現する側だった時に言われていたことが、少しわかって気がしました。
撮影準備は毎日ヒーヒー言いながらやりました。

知らないことを必死にこなしていたせいか、寝不足と疲労のせいかひどい顔だったのでしょう。現場では監督に「怒ってる?」といわれていました。
もっと余裕のある人間になろうと思います。
でも、この現場を経験して今後の進み方として、新たな視野が持てました。
熊切監督の愛猫も撮影に来てくれました。
癒されましたが、怯えまくっていて、「猫さん待ち」がありました。
その時の監督がとても可愛らしく、というか監督は終始現場のムードメーカーでした。
ストーリーはとても切ないものですが、現場はとても監督愛に包まれておりました。
それゆえに辛くても頑張れました。

きっと監督の温かさが映像にも出ていると思います。
作品を観た後は、誰か大切な人に逢いたくなるんじゃないかと思います。

廣木監督は部屋に入って来てから、なんとも言えない空気をかもし出していました。
怖いのかな…と思ったりもしましたが、とても人をみている方でした。
言葉は多くないけど、1人1人をじっくり見てくれました。
それは作品にも生きてるんだろうなと思います。

私の役は途中で加えてくれました。
なので、福島に着くまで本当に何も知らないままでした。
「そこにいる」ということは簡単だけど難しい。力があれば、できるんでしょうが、廣木監督はあえてほぼ何も知らせずに撮影に向かったのだと思ったし、監督もおっしゃってました。
だから、「そこにいる」すなわち、その空間や相手の表情、言葉などを感じたまま、しゃべる、動く、反応している皆が映っているんじゃないかと思います。
廣木監督は「何もするな」とよくいってらっしゃいました。その演出を受けて見たくて、今回参加しました。
「何もしない」今後も忘れずにいたい言葉です。
福島の今が、少しでも映っていると思います。言葉にできないけど、感じるものがたくさんありました。
その空気をぜひ感じて、考えて欲しい作品です。


大根仁監督クラスは初め、演技コースで参加しました。

シナリオがある題材に、当てはまるのは難しいなぁ、と始まる前から感じていました。
結果は、案の定でしたが、なんだかそれだけで終わるのが悔しくて、
何かを得たくて、制作応援で入りました。

とてもとても自分にもスタッフにもストイックで、作りたいものに対して一直線な監督で、
素人の私は、たくさんご迷惑もおかけしたと思います。
作品を作るにあたって、当たり前のことができないことに、頭も体もいっぱいいっぱいになりました。
本当に逃げ出したい、と思ったこともありました。
とても厳しい現場でしたが、その分教えてもらえることが多かったです。
無言で、行動でやるべきことや、やり方を教えてくださる監督でした。
大根監督の姿を観ていると、必死ながらも「おもしろくなるな、この作品」という気がしてならなかったです。
そのおもしろさは、劇場で確認してください。


いまおか監督作品は、撮影日だけお邪魔しました。

いまおか監督とは、第一段「アルクニ物語」で、初めてお会いしました。
待ち時間、撮影、喫煙所・・・・
いろんな姿を見せてくださる方で、一気にファンになりました。

そんないまおか監督。どんな撮影をされるのだろうと…
現場でのリハの時間はとても長かったです。何度も何度もリハを繰り返し、
一番面白いものを探していました。
「いい!!!」と思った時のいまおか監督は、カット前にガッツポーズをしています。
それを観ると、なんだか嬉しくなりました。
新宿での「セックスしたい」の叫びは、ある意味気持ちよく観れました。
うらやましいぐらい・・・。
劇場で一緒に叫んでみてください。


山本監督の現場に1度はカメラの前に立つ人間として行きたかったので、念願叶いました。

普段はとてもアグレッシブな山本監督ですが、演出や作品への向き合い方はとても繊細で、頭のいい方だなと思っていました。
「長編を撮る」と聞いたときは、とても驚きましたが、同時にウキウキしました。
どんな作品になっていくのか、私もまだ知りませんが、そのプロローグが今回上映されます。
シネマ☆インパクトでの、山本監督作品は3本目ですが、また違った雰囲気です。
バイオレンスなところもありながら、繊細さがとても出ている作品だなと思いました。
長編上映前に、ぜひ山本ワールドに浸っていただきたいと思います。


長々と書いてしまいました。
シネマ☆インパクトに関わったことで、映画の自由さと、楽しさ、辛さ、それ以外もたくさん知れました。
とても今後の生き方に影響を与えてもらいました。

観た方にも、何か受け取ってもらえるのではないかと思います。
息詰まることが多いけど、私はこの作品達に関われて、生きてる実感が湧きました。

そんな作品達を、ぜひたくさんの人に観てもらいたいです。